農林水産省大臣官房新事業・食品産業部外食・食文化課が令和7年7月に公表した、日本の食文化の現状と保護・継承に向けた取組について総合的に解説したものです。
本資料は、日本食と和食文化の概要から始まり、ユネスコ無形文化遺産に登録された和食文化の特徴、現在の継承状況、消費動向、そして今後の施策展開まで、食文化をめぐる情勢を包括的に整理しています。和食文化は「自然を尊重する」という心に基づいた日本人の食慣習として定義され、多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重、健康的な食生活を支える栄養バランス、自然の美しさや季節の移ろいの表現、正月などの年中行事との密接な関わりという4つの特徴を持つことが示されています。
継承状況については、地域や家庭で受け継がれてきた料理や食べ方・作法等の和食文化を次世代へ伝えている国民の割合が令和6年度で44.8％、郷土料理や伝統料理を月1回以上食べている国民の割合が56.1％となっており、課題が浮き彫りになっています。また、一世帯当たりの食関連支出額は増加傾向にあるものの、和食関連は横ばいで推移し、「和風の料理が好き」と答えた人の割合は平成10年の65.8％から令和6年には41.6％まで低下しています。
消費動向では、米の一人当たり年間消費量が平成12年の64.6kgから令和4年には50.7kgへ、味噌・醤油の消費量も同様に減少傾向にあることが示されています。漬物の一世帯当たり年間支出額も平成12年の15,446円から令和5年には11,201円まで減少しており、和食文化を支える基本的な食材の消費が全般的に低下している実態が明らかになっています。
令和7年4月に閣議決定された新たな食料・農業・農村基本計画では、和食文化の保護・継承が重要施策として位置づけられました。具体的には、和食に接する機会の確保として国民的運動の展開、和食文化継承リーダーの育成、伝統的な食のデータベースの充実、海外需要の取り込みなどが盛り込まれています。また、食育活動を通じた食文化の保護・継承も重要な取組として、各地域での実践事例が紹介されています。
記事は、和食文化が長い歴史の中で海外の影響を受けながら変化・発展・進化を遂げてきたダイナミックな文化であることを示すとともに、現代における継承の危機と、それに対応するための総合的な施策の必要性を明確に示しています。