経済産業省(中小企業庁)は2025年9月を「価格交渉促進月間」として設定し、サプライチェーン全体での価格転嫁促進と取引適正化を推進すると発表しました。
価格交渉促進月間の背景と目的 継続的な賃上げを実現する成長型経済への転換には、その原資確保が不可欠であり、より一層の価格転嫁と取引適正化が重要となっています。エネルギー価格や原材料費、労務費などが上昇する中、中小企業が適切に価格転嫁をしやすい環境を整備することが急務となっています。
制度の仕組みと実施内容 2021年9月より毎年9月と3月を「価格交渉促進月間」と設定し、以下の取組みを実施しています:
- 広報・啓発活動: 武藤経済産業副大臣からのメッセージ動画配信、業界団体への要請文送付
- 講習会・セミナー開催: 価格交渉・転嫁手法の普及啓発
- 業界団体を通じた要請: 発注企業に対する価格転嫁への協力要請
フォローアップ調査の充実 各月間終了後には包括的なフォローアップ調査を実施し、取組みの実効性を検証しています:
- アンケート調査: 多数の中小企業を対象とした価格交渉・転嫁状況の定量把握
- 下請Gメンヒアリング: 現場レベルでの詳細な実態調査
- 匿名性の徹底: 回答が発注者に知られないよう配慮し、信頼性の高いデータを収集
- 業界別分析: 価格転嫁率の業界ごとの結果と順位付けを実施
指導・助言の強化 中小企業等経営強化法(振興法)に基づき、状況の芳しくない発注者に対して以下の措置を講じています:
- 事業所管大臣名での指導・助言: 問題のある発注企業への直接的改善要請
- 経営陣への働きかけ: 企業トップレベルでの意識改革促進
- 調達部門への改善指示: 現場レベルでの具体的改善行動の徹底
最新の取組み状況 2025年3月のフォローアップ調査結果では、価格転嫁の進展状況が詳細に分析され、問題のある発注者リストも公表されています。これにより、透明性を確保しながら取引適正化を推進しています。
政策的意義と今後の展開 この制度は単なる価格上昇容認ではなく、適正な価値に見合った価格形成を通じて:
- 中小企業の収益力向上と賃上げ原資確保
- サプライチェーン全体の持続可能性向上
- 日本経済の構造転換と競争力強化
を目指しています。米国関税措置による影響が不透明な中でも、サプライチェーン全体での取引適正化の取組みを継続し、国の各機関や地方公共団体にも率先した取組みを要請しています。