ジェトロが発行した「ブラジルの貿易投資年報 2025年版」について、南米最大の経済大国ブラジルの最新の貿易・投資動向を包括的に分析したものです。
2024年のブラジル経済は、GDP成長率3.2％を記録し、コロナ禍からの回復が本格化しました。貿易面では、輸出額が過去最高の3,420億ドルに達し、特に農産物（大豆、トウモロコシ、牛肉、鶏肉）と鉱物資源（鉄鉱石、原油）が好調でした。最大の貿易相手国は引き続き中国で、全輸出の31％を占めていますが、インドや東南アジア向けも着実に増加しています。
外国直接投資（FDI）は前年比15％増の850億ドルとなり、特にグリーンエネルギー分野への投資が活発化しています。ブラジルは水力発電に加え、風力・太陽光発電の導入を急速に進めており、2024年の再生可能エネルギー比率は電力供給の85％に達しました。この分野には欧州や中国からの投資が集中しており、日本企業も洋上風力発電プロジェクトへの参画を進めています。
日本との経済関係では、二国間貿易額が120億ドルを超え、日本はブラジルにとってアジアで中国に次ぐ第2位の貿易相手国となっています。日本からの投資残高は約300億ドルで、約700社の日系企業が進出しています。特に自動車産業では、日系メーカーが市場シェアの約40％を占め、電動化投資も加速しています。
新たな投資機会として注目されているのが、デジタル経済分野です。ブラジルは中南米最大のEコマース市場であり、フィンテック企業も急成長しています。また、アグリテック分野では、精密農業技術への需要が高まっており、日本の技術力を活かせる領域として期待されています。
課題としては、複雑な税制、官僚的な手続き、インフラの未整備などが挙げられますが、政府は「ブラジルコスト」削減に向けた改革を推進しています。2024年には税制改革法案が可決され、今後10年かけて税制の簡素化が進められる予定です。
記事は、ブラジルが豊富な資源と巨大な国内市場を背景に、グリーン経済とデジタル経済の両面で成長機会を提供しており、日本企業にとって長期的な投資先として魅力的であることを示しています。