世界銀行と日本開発経済学会との連携強化に向けた取組

本記事は、世界銀行と日本開発経済学会（JADE）との連携強化に向けた取組について紹介している。国際開発金融機関（MDBs）の業務は、融資などの「資金支援」だけでなく、研究・分析・政策助言などの「非資金支援」も重要な柱であることを説明。特にMDBsのナレッジ業務は、学術研究とは異なり、政策立案・実施・検証や政府機関との対話に資することに重きを置く実践的な性格を持つ。世界銀行は自らを「Knowledge Bank」と位置づけ、研究成果を開発現場に落とし込み、革新的な学説を取り入れて開発効果をスケールアップし、グローバルな学説の潮流を形成することを特徴としている。日本とMDBsのナレッジ分野での協力事例として、防災分野での成功例を紹介。2011年東日本大震災後、世銀は日本の専門家と協力して「大規模災害から学ぶ：東日本大震災からの教訓」をまとめ、これが世銀の「防災の主流化」や「世界銀行東京防災ハブ」設立につながった。また、Knowledge for Change Program（KCP）を通じた研究支援、アジア開発銀行研究所（ADBI）の活動、奨学金プログラムによる人材育成なども紹介。JADEは2001年から続くHayami Conferenceを発展的に改組して設立された学会で、園部哲史教授（学会長）、澤田康幸教授（副学会長）など、MDBsで豊富な経験を持つ教授陣が在籍。JADEの目的は、日本の開発経済学研究の海外発信、研究成果の途上国開発現場での実践、若手研究者の育成であり、これらは日本政府のMDBsとの協力方針と一致している。財務省は世銀とJADEの連携を促進し、双方向の知識共有と協力を推進することで、日本の開発分野でのプレゼンス向上と途上国の開発への貢献を目指している。本取組は、片方向の「支援」ではなく、双方向の「協力・連携」として推進すべきという視点に立っていることが強調されている。