aff(あふ)2025年7月号「農業の発展に欠かせない土地改良区」
農林水産省が発行する食とくらしの「今」が見えるWebマガジン「aff(あふ)」の2025年7月号について、土地改良区の役割と重要性を特集したものです。
土地改良区の基本概要
土地改良区とは、農業の生産性を高めるために農地を改良、保全することを目的とした地域の農業者等により設立される団体です。古くから農地に必要な水を供給する事業や農地を整備する事業を進めており、日本の農業基盤を支える重要な組織として機能しています。
土地改良区は地域の実情に応じて、「水を取る」「水を運ぶ」という基本機能を担っています。多くの農地は必要な水を川などから水路を使って引いており、水を引くために必要ながけ(せき)です。堰を通って水をせき止めると水位が上がり、水は取水口から水路へ流れるようになります。農業用水を取水するための堰を「頭首工(とうしゅこう)」と呼んでいます。
水資源管理システム
農地に水を運ぶためには水路が必要です。取水した農業用水は、大きな用水路から中くらいの用水路、小さな用水路へと段階的に分配され、最終的に各農地へと供給されます。このシステムにより、効率的な農業用水の配分と管理が実現されています。
土地改良区は、この水資源管理システムの維持・運営において中核的な役割を果たしています。水路の建設や維持管理、適切な水量の配分、施設の老朽化対策など、農業生産に不可欠な水利インフラの総合的な管理を担当しています。
地域農業への貢献
土地改良区の活動は単なる水利管理にとどまらず、地域農業の持続的発展に多面的に貢献しています。農地の基盤整備を通じて作業効率を向上させ、安定した農業生産を支援しています。また、災害時の排水対策や農地の保全機能も重要な役割として担っています。
近年では、気候変動への対応や環境保全型農業への転換、スマート農業の導入支援など、時代の要請に応じた新たな取り組みも展開しています。IoT技術を活用した水管理システムの導入や、生態系保全に配慮した水路整備など、持続可能な農業発展に向けた取り組みが進められています。
組織運営と今後の課題
土地改良区は農業者の自主的な組織として運営されており、地域の実情に精通した農業者自身が主体となって運営することで、きめ細かな水利管理が可能となっています。しかし、農業従事者の高齢化や担い手不足により、組織運営の継続性が課題となっています。
この課題に対し、組織の統合・再編による効率化、若手農業者の参画促進、技術の導入による省力化などの取り組みが各地で進められています。また、地域住民との連携や都市部との交流を通じて、土地改良区の活動に対する理解促進も重要な取り組みとなっています。
記事は、土地改良区が日本の農業基盤を支える重要な役割を果たしており、持続可能な農業発展のために組織の近代化と地域連携の強化が必要であると結論づけています。