農畜産業振興機構が報告した南西諸島のサトウキビ生産・製糖産業における温室効果ガス排出量の算出結果について、持続可能な製糖産業の構築に向けた取組を分析したものです。
南西諸島(沖縄県、鹿児島県南部の島嶼地域)は、日本の砂糖生産の大部分を担う重要な地域です。サトウキビは台風や干ばつに強い作物として、これらの地域の基幹作物となっていますが、地球温暖化対策の観点から、生産・製糖過程における温室効果ガス排出量の把握と削減が求められています。
本調査では、サトウキビの栽培から製糖工程、輸送に至るまでのライフサイクル全体にわたる温室効果ガス排出量を詳細に算出しています。栽培段階では、肥料の製造・使用に伴うCO2およびN2O(一酸化二窒素)の排出、農業機械の燃料消費によるCO2排出が主な排出源となっています。特に、窒素肥料の使用に伴うN2O排出は、その温室効果がCO2の約300倍と高いため、全体の排出量に大きく影響しています。
製糖工程では、サトウキビの搾汁・濃縮・結晶化に必要なエネルギー消費が主な排出源です。多くの製糖工場では、サトウキビの搾りかす(バガス)をボイラー燃料として活用することで、化石燃料の使用を削減していますが、さらなる省エネルギー化と再生可能エネルギーの導入が課題となっています。
算出結果を踏まえた削減対策として、精密農業技術による肥料使用量の最適化、緩効性肥料の導入によるN2O排出削減、製糖工場の省エネ設備更新、太陽光発電等の再生可能エネルギー導入などが提案されています。また、サトウキビ由来のバイオエタノール生産や、バガスを原料とした新素材開発など、カーボンニュートラルに貢献する新たな事業展開の可能性も示されています。
記事は、地域の基幹産業であるサトウキビ・製糖産業が、環境負荷低減と経済性を両立させながら持続可能な発展を遂げるための道筋を示す重要な基礎資料となっています。