調査の目的と範囲 経済産業省が次世代モビリティ産業の育成を目的として実施してきた各種政策施策の効果を検証し、今後の戦略方針を策定するために実施した政策評価調査の報告書です。電気自動車（EV）、自動運転、ドローン、空飛ぶクルマ等の次世代モビリティ分野における技術開発支援、実証実験、制度整備等の政策効果を定量的に分析し、産業競争力向上への寄与を評価しています。
政策効果の定量評価 次世代モビリティ関連の政策投資総額は過去5年間で累計1.8兆円に達し、この結果として国内EV販売台数は前年比85.3％増の45万台、市場シェアが3.2％から8.7％に上昇しました。自動運転技術開発では、レベル3以上の技術を保有する日本企業が12社から28社に増加し、特許出願件数は年間2,850件と世界第2位の水準を維持しています。ドローン産業では市場規模が前年比32.1％増の3,200億円に拡大し、産業用途での活用が急速に進展しています。
産業構造への影響分析 自動車産業のサプライチェーンでは、従来のエンジン関連部品メーカーの42.3％がEV・電動化関連事業への転換を開始し、新規雇用創出数は年間8.7万人に達しています。また、IT・ソフトウェア企業の自動車産業参入が加速しており、異業種連携プロジェクトが前年比78.4％増の342件実施されています。地域別では、愛知県を中心とした中部地域が引き続き中核的地位を占める一方、九州地域では半導体関連企業の集積を活かしたEV用パワー半導体産業の育成が進展しています。
課題と今後の戦略方向性 報告書では、次世代モビリティ産業の国際競争力強化に向けて、年間5,000億円規模の「モビリティイノベーション加速プログラム」の創設を提案しています。EV用電池・モーター等の中核技術開発に2,000億円、自動運転・コネクテッド技術の実用化に1,500億円、充電インフラ整備に1,000億円、人材育成・リスキリング支援に500億円を配分する計画です。また、2030年までにEV・PHV の国内販売比率を現在の8.7％から30％以上に引き上げ、自動運転車両の商用化実現により世界市場での技術的優位性確保を目標としています。さらに、空飛ぶクルマの2025年商用運航開始に向けた制度整備と実証実験の加速化を図るとしています。