農畜産業振興機構が分析した中国におけるキャッサバ需給動向について、世界最大のキャッサバ輸入国としての中国の市場構造と今後の展望を詳細に報告したものです。
中国は、キャッサバの国内生産量が限定的であるにもかかわらず、世界最大のキャッサバ輸入国となっています。年間輸入量は約1000万トン（乾燥換算）に達し、主にタイ、ベトナム、カンボジアなどの東南アジア諸国から調達しています。この大量輸入の背景には、中国国内での多様な用途におけるキャッサバ需要の急速な拡大があります。
用途別では、でん粉製造が最大の需要分野となっており、全体の約60％を占めています。キャッサバでん粉は、食品加工、製紙、繊維、接着剤など幅広い産業で使用されており、特に加工食品産業の発展に伴い需要が増加しています。次いで、エタノール製造用が約25％を占め、バイオ燃料政策の推進により今後も需要拡大が見込まれています。また、飼料用途も約15％と重要な位置を占め、養豚・養鶏産業の成長とともに需要が伸びています。
国内生産については、広西チワン族自治区、広東省、海南省などの南部地域で栽培されていますが、生産量は年間約500万トンにとどまっています。単収の低さ、機械化の遅れ、他作物との競合などが生産拡大の制約要因となっています。このため、中国政府は品種改良、栽培技術の向上、機械化の推進などを通じて国内生産の増強を図っていますが、需要の伸びに追いつかない状況が続いています。
今後の展望として、中国のキャッサバ需要は引き続き堅調に推移すると予測されています。特に、環境に配慮した生分解性プラスチックの原料としての新たな需要や、高付加価値なキャッサバ由来製品の開発が進んでいることから、輸入依存度は当面高い水準で推移する見込みです。
記事は、中国のキャッサバ需給動向が、東南アジアのキャッサバ生産国にとって重要な輸出市場であり、国際的なキャッサバ貿易に大きな影響を与えていることを示しています。