参院選前の経済対策として議論される消費税減税について、より効果的な代替案として生産力強化と社会保険料軽減を提言した論考です。
主要なポイント
1. 消費税減税論への懐疑的評価
- 立憲民主党・日本維新の会:食料品への消費税率を8%から0%に(時限的)
- 国民民主党:一律5%への減税を主張
- 「非伝統的財政政策」として異時点間の代替効果を期待
- しかし欧州の事例では効果にばらつき(ドイツは成功、英国は数カ月で効果消滅)
- インフレ期には生産量拡大を伴わない限り、物価高を悪化させるリスク
2. 財政的制約と持続可能性の問題
- 食料品軽減税率0%で国と地方の減収は約5兆円規模
- 消費税は社会保障財源であり、代替財源が必須
- 過去2回の消費税率引き上げ延期の経験から、元に戻すのは困難
- 国債残高1千兆円超、海外投資家の国債保有割合12%まで増加(2024年12月)
- 日本国債の格付けはG7でイタリアに次いで低い
3. 生産力強化による持続的成長戦略
- デフレギャップ解消から供給力拡大へ政策転換すべき
- 1%の実質賃金上昇には労働生産性向上が不可欠
- 成長志向の社会資本整備、半導体・蓄電池生産への投資
- イノベーション創出につながる研究開発支援、デジタル化推進
- 経産省「産業構造ビジョン」:2040年までに民間投資200兆円、名目GDP975兆円目標
4. 勤労者への社会保険料軽減提案
- 勤労者の負担は消費税より社会保険料が重い(データで示す)
- 34歳以下と比較した世代間格差が顕著
- 健康保険料の4割は高齢者医療に支出される実態
- 厚生年金・国民年金保険料の定額または定率還付を提案
- 財源は相続税・金融所得課税強化、所得控除見直しで確保
5. トランプ関税への対応策
- 米国への輸出品の約3割(約6兆円)が自動車関連(2024年)
- 農林水産物・食料品の米国向け輸出は2千億円にとどまる
- 輸出事業者への緊急支援より、構造転換の推進が重要
- 新たな市場開拓や業種転換を含む長期的対応が必要
記事は、目先の景気対策ではなく、成長率低迷や格差拡大という構造的課題に対処する政策として、生産力強化と勤労者への的を絞った支援の組み合わせが必要であると結論づけています。