日本における親子上場の解消が加速している動向について、その背景と評価を分析したものです。
主要なポイント
1. 親子上場の現状と特徴
- 日本では公開会社が他の公開会社の株式を20%以上保有し支配株主となるケースが全体の32%に達する
- 米英では機関投資家の保有が支配的で事業法人の保有割合は5~6%(2012年時点)
- 大陸欧州や韓国では創業家や財産管理会社が支配株主として頂点に立つピラミッド構造が特徴
- 親子関係にある企業のパフォーマンスは同業種・同規模の独立企業に比べて低くなかった
2. 親子上場解消の加速
- 上場子会社数は2007年度末の467社をピークに2023年度末には233社まで減少
- 2019年度以降は完全子会社化(従来6割)に加えて売却が増加し2割を超える
- 日立製作所は2009年時点の16社の上場子会社のうち7社を完全子会社化、5社を内外企業に、3社をファンドへ売却
3. 解消加速の4つの要因
- 株主からの批判強化:アクティビストに加え伝統的機関投資家も親会社の資本効率に関心を高める
- 政府・証券取引所の否定的姿勢:2019年から利益相反問題を重視、2023年のPBR1倍割れ企業への改善要請
- グループ経営の制約:機動的な事業再編や子会社を買い手とするM&A戦略が子会社株主の承認を要すため制約
- 買い手の多様化:バイアウトファンドが経営ノウハウや海外ネットワークを持つ買い手として重要性を高める
4. 評価と今後の課題
- 親子上場の解消は統合の利益実現、資本効率改善、利益相反防止、ガバナンス改善の点で望ましい
- IT産業など成長機会が豊富な新興企業では事業法人による投資の合理性は依然として高い
- 親会社は支配株主の地位を維持するなら企業価値向上や資本効率の観点から合理性を具体的・定量的に説明することが不可欠
- 完全子会社化は買収プレミアムの上昇により大きなコストを伴い、組織面の改善のみで賄うことは容易ではない
記事は、親子上場の解消は構造変化に伴う望ましい動きである一方、成長企業での合理性も存在し、維持する場合は説明責任と少数株主保護が重要であると結論づけています。