経済産業省が2025年7月15日に公開した「経済産業政策の新機軸」の第2回解説記事で、賃上げ継続と成長思考の国内投資の関係について説明したものです。
日本では過去30年間、労働生産性が向上していたにもかかわらず、実質賃金の上昇が停滞していました。その主な原因は、エネルギーや原材料などの輸入価格が高騰する一方で、電気製品などの製品や宿泊・飲食などのサービスの輸出価格を十分に上げられず、交易条件が悪化したことにあります。1995年から2021年の26年平均で見ると、労働生産性の上昇は主要先進国並みだったものの、交易条件の悪化が実質賃金停滞の最大要因となっており、その影響は社会保障負担要因や労働分配率要因よりも大きいことが明らかになっています。
コロナ禍以降、資源価格や原材料価格の高騰により、これまで商慣習の中で困難だった商品の値上げが当たり前になりつつあります。この環境変化は、企業が付加価値の高い製品・サービスを生み出し、適正な価格設定を行いやすくする機会となっています。重要なのは、イノベーションを通じて世界に通用する高付加価値な製品・サービスを創出し、それを海外でも評価される価格で販売することです。日本全体として海外への価格転嫁を実現することが、物価上昇を上回る賃上げの鍵となります。
「経済産業政策の新機軸」では、「国内投資の拡大、イノベーションの加速、所得向上」を目指した積極的な産業政策を展開しています。これまでの政策効果もあり、全国各地で大型投資事例が増加しています。この流れを一過性で終わらせないためには、研究開発やソフトウェアといった次世代型投資を継続的に増やし、企業の予見可能性を高めることが必要です。
記事は、縮み思考から成長思考への転換を通じて、持続的な賃上げと経済成長の好循環を実現することの重要性を示しています。