EY Japanが発表した「CPOはインフレ、地政学リスク・貿易/関税政策の変化にどう備え、乗り越えようとしているのか?~日本企業の調達を取り巻く課題も踏まえた考察~」に関する調査レポートです。グローバルなCPO(最高調達責任者)調査を基に、日本企業の調達部門が直面する課題と戦略的対応を分析しています。
主要なポイント
1. レポートの概要
- 発行機関:EY Japan
- 公表日:2025年7月1日
- 調査対象:グローバルCPO調査(日本企業の特性も分析)
- 主要テーマ:調達部門の戦略的進化と課題対応
2. CPOが直面する3大課題
- インフレーション:
- 原材料・部品価格の継続的上昇
- エネルギーコストの高騰
- 人件費の増加圧力
- 地政学的リスク:
- 米中対立の激化
- ウクライナ情勢の長期化
- 台湾海峡問題への懸念
- 貿易・関税政策の変化:
- トランプ政権の追加関税
- 保護主義的政策の拡大
- サプライチェーンの分断リスク
3. インフレ対策の戦略
- 価格管理の高度化:
- 市場価格の継続的モニタリング
- 価格予測モデルの構築
- ダイナミックプライシングの導入
- コスト削減施策:
- 仕様の見直しと標準化
- 共同購買の拡大
- 長期契約による価格固定化
- サプライヤー協働:
- コスト構造の透明化
- 生産性向上の共同取組
- イノベーションパートナーシップ
4. 地政学的リスクへの対応戦略
- サプライチェーンの多様化:
- 単一国依存からの脱却
- 地域分散型調達の推進
- フレンド・ショアリングの活用
- リスク評価の強化:
- カントリーリスク評価システム
- シナリオプランニング
- 早期警戒指標の設定
- 柔軟性の確保:
- 代替調達先の事前確保
- 在庫戦略の見直し
- モジュール化設計の推進
5. 貿易・関税政策変化への適応
- ニアショアリング戦略:
- 近隣国への生産移管
- 地域内サプライチェーン構築
- 関税回避ルートの開発
- 貿易コンプライアンス強化:
- 原産地管理の精緻化
- 関税分類の最適化
- FTA/EPA活用の促進
- 政策モニタリング:
- 規制動向の継続的把握
- ロビー活動への参画
- 業界団体との連携
6. 日本企業特有の課題
- 組織的課題:
- 経営層と調達部門の距離
- 調達の戦略的位置づけ不足
- 製造支援機能としての限定的役割
- デジタル化の遅れ:
- AI/ML投資の不足
- データ活用の未成熟
- レガシーシステムの残存
- 人材・スキル不足:
- 戦略的調達人材の不足
- グローバル対応力の欠如
- キャリアパスの不明確さ
7. サステナビリティ調達の課題
- 日本企業の現状:
- 経営戦略との連携不足
- 予算配分の不十分さ
- 実効性のある取組みの欠如
- グローバル企業との差:
- ESG評価の体系化遅れ
- サプライヤーエンゲージメント不足
- 情報開示の質的劣後
8. デジタル・AI活用の方向性
- 調達プロセスの自動化:
- RPA導入による効率化
- AIによる需要予測
- 自動発注システム
- データアナリティクス:
- 支出分析の高度化
- サプライヤーパフォーマンス管理
- リスク予測モデル
- デジタルツイン活用:
- サプライチェーン可視化
- シミュレーション分析
- 最適化アルゴリズム
9. 組織・人材変革の提言
- 調達機能の再定義:
- 戦略的ビジネスパートナーへの進化
- 経営レベルでの意思決定参画
- 価値創造への貢献
- 人材育成・確保:
- 専門性の高い人材の採用
- 継続的なスキルアップ
- グローバル人材交流
- 組織文化の変革:
- イノベーション志向
- データドリブン文化
- アジャイルな意思決定
10. 実行に向けたロードマップ
- 短期(6-12ヶ月):
- 現状評価と課題特定
- クイックウィンの実行
- パイロットプロジェクト
- 中期(1-2年):
- 戦略的調達体制の構築
- デジタル基盤の整備
- 人材育成プログラム
- 長期(3年以上):
- 完全なトランスフォーメーション
- エコシステムの構築
- 継続的イノベーション
11. 成功のための重要成功要因
- 経営層のコミットメント:調達の戦略的重要性の認識
- 投資の確保:デジタル・人材への適切な投資
- 変革管理:組織全体での意識改革
- 外部連携:パートナーシップの活用
- 継続的改善:PDCAサイクルの確立
本レポートは、日本企業の調達部門が、グローバルな課題に対応しつつ、固有の組織的・文化的制約を克服し、戦略的機能として進化するための実践的な指針を提供しています。特に、経営と調達の距離を縮め、デジタル化を推進し、人材を強化することが、競争力向上の鍵となることを強調しています。