この記事は、世界銀行による途上国の債務危機に関する最新報告書「International Debt Report」の要点を解説したものです。
主要なポイント
1. 債務危機の深刻化
- 途上国の対外債務総額:13.1兆ドル(過去最高更新)
- GDP比債務率:平均42%(2019年の28%から急上昇)
- 債務危機・高リスク国:54カ国(全途上国の40%)
- 年間債務返済額:1.4兆ドル(輸出収入の35%相当)
2. 債務構造の変化
- 中国の台頭:二国間債務の45%が中国向け(10年前は18%)
- 民間債務増加:ユーロ債等が全体の58%(政府系は42%)
- 金利上昇:平均金利6.8%(2020年の3.2%から倍増)
- 通貨リスク:ドル建て債務が73%、自国通貨安で負担増
3. 地域別の状況
- アフリカ:22カ国が債務危機、平均債務率65%
- 中南米:アルゼンチン、エクアドル等がデフォルト状態
- アジア:スリランカ、パキスタンがIMF支援下
- 中東欧:比較的健全も一部国でリスク上昇
4. 債務危機の要因分析
- COVID-19対策による財政支出急増
- ウクライナ危機による食料・エネルギー価格高騰
- 米国利上げによる資本流出と通貨下落
- 気候変動災害による追加的財政負担
5. 解決策と国際協調
- 債務再編:「共通枠組み」適用は4カ国のみで進展遅い
- SDR活用:IMF特別引出権の再配分で流動性供給
- 気候スワップ:債務削減と環境投資のリンク
- 透明性向上:債務データの開示義務化
記事は、G20主導の債務処理メカニズムの抜本的改革と、中国を含む全債権者の協調が不可欠であり、放置すれば世界経済全体へのシステミックリスクになると警告しています。