インド太平洋地域の経済統合深化と日本の戦略的役割について分析した研究レポートです。
本研究では、インド太平洋経済枠組み（IPEF）、環太平洋パートナーシップ協定（CPTPP）、地域的な包括的経済連携協定（RCEP）などの経済連携の進展が、地域経済統合、貿易・投資パターン、サプライチェーン構築に与える影響について包括的な分析を実施しています。特に、米中対立の激化、経済安全保障の重要性拡大、デジタル経済の発展などの構造変化が地域経済に与える影響が詳細に検討されています。
地域経済統合の分析では、各経済連携協定の特徴、加盟国の経済規模・発展段階、統合効果の定量的評価が実施されており、重複する枠組み間の関係性と相互補完性が明確化されています。また、貿易創出効果、投資促進効果、技術移転効果などが業種別・国別に分析されています。
サプライチェーンの再構築については、コロナ禍や地政学的緊張の高まりを受けた供給網の多様化、レジリエンス強化、「チャイナプラスワン」戦略の進展などが地域内分業構造に与える影響が分析されており、日本企業の地域戦略への含意が検討されています。
デジタル経済の発展では、デジタル貿易ルールの標準化、データ流通の自由化、デジタル格差の解消、サイバーセキュリティ協力などの課題について、地域協力の現状と今後の方向性が分析されており、デジタル経済圏形成における日本の貢献可能性が論じられています。
経済安全保障の観点では、重要技術・物資の安定供給確保、外国投資審査の強化、輸出管理の調和、重要インフラの保護などの課題について、地域協力の必要性と日本の役割が詳細に分析されています。
インフラ連結性の強化については、「自由で開かれたインド太平洋」構想に基づく質の高いインフラ投資、持続可能な開発目標（SDGs）の達成、グリーン・デジタル転換支援などの分野で、日本の技術・資金・ノウハウを活用した地域貢献の可能性が検討されています。
多国間協力の枠組みでは、ASEAN、日ASEAN、東アジア首脳会議（EAS）、アジア太平洋経済協力（APEC）などの既存枠組みとの連携、新興国の能力構築支援、国際機関との協力などについて、効果的な協力体制の構築方策が分析されています。
政策提言では、戦略的パートナーシップの深化、ルールベース国際秩序の維持・強化、持続可能な発展支援、人材育成・技術協力の推進などの重要な政策方向性が提示されており、日本の地域リーダーシップ発揮の重要性が強調されています。
記事は、インド太平洋地域の平和と繁栄の実現に向けて、日本が積極的な役割を果たすことが地域全体の利益につながると結論づけています。