経済産業省が2025年7月25日に開催した「産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会脱炭素化再生資源利用ワーキンググループ(第1回)」について、脱炭素社会実現に向けた再生資源利用の推進方策を検討したものです。
本ワーキンググループでは、カーボンニュートラル実現と資源循環の両立を目指し、再生資源の利用促進による脱炭素化の具体的な取り組みについて、各産業界の代表者から現状報告と課題提起が行われました。
日本自動車工業会からは、自動車産業における再生資源利用の現状と課題について報告がありました。自動車のライフサイクル全体でのCO2削減には、製造段階での再生材料の活用が重要であり、特に鉄、アルミニウム、樹脂などの主要素材における再生材利用率の向上が課題として挙げられました。また、車載バッテリーのリサイクル技術開発と、レアメタル等の資源確保の観点からも再生資源利用の重要性が強調されました。
家電製品協会からは、家電リサイクル法に基づく取り組みの成果と今後の展開について説明がありました。エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の4品目を中心に、高いリサイクル率を達成している一方で、再生プラスチックの品質向上と安定供給が課題となっています。また、製品設計段階からリサイクルを考慮した「環境配慮設計」の推進と、消費者への情報提供の重要性が指摘されました。
クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)からは、海洋プラスチック問題の解決と脱炭素化の両立について報告がありました。プラスチックの資源循環を通じたCO2削減効果の試算が示され、ケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルの技術開発と社会実装の重要性が強調されました。また、再生プラスチックの品質基準や認証制度の整備の必要性も提起されました。
日本プラスチック工業連盟からは、プラスチック製造業における再生材利用の技術的課題について説明がありました。再生プラスチックの物性低下や品質のばらつき、コンタミネーション(異物混入)の問題など、技術的なハードルが存在する一方で、これらを克服するための研究開発の取り組みが紹介されました。また、再生材利用のインセンティブ制度の必要性も提言されました。
プラスチック容器包装リサイクル推進協議会からは、容器包装リサイクル法に基づく取り組みの現状と課題が報告されました。分別収集・選別・再商品化のプロセスにおける効率化と、再生材の品質向上が重要な課題として挙げられました。また、消費者の分別排出への協力促進と、リサイクルコストの適正化についても議論されました。
全国清涼飲料連合会からは、PETボトルのボトルtoボトルリサイクルの推進状況について報告がありました。2030年までにPETボトルの再生材使用率50%を目指す業界目標が示され、その実現に向けた技術開発と回収システムの強化について説明がありました。また、消費者への啓発活動と、地域との連携によるリサイクル推進の重要性が強調されました。
事務局からは、再生資源利用による脱炭素効果の定量的評価手法と、各産業における再生材利用目標の設定について提案がありました。また、技術開発支援、規制緩和、経済的インセンティブなど、総合的な政策パッケージの必要性が示されました。
記事は、脱炭素社会の実現には再生資源の利用拡大が不可欠であり、技術開発、制度整備、消費者の意識改革を含む総合的なアプローチが必要であると結論づけています。