ジェトロが実施した日本と東南アジア等諸外国とのスタートアップエコシステムの比較調査について、各国の特徴と日本の課題を包括的に分析したものです。
調査対象国は、日本、シンガポール、インドネシア、タイ、ベトナム、インド、イスラエルの7カ国で、スタートアップの成長環境、資金調達、人材、規制環境、国際展開支援などの観点から詳細な比較分析が行われています。2025年6月時点のデータに基づき、各国のエコシステムの成熟度と特徴が明らかにされています。
シンガポールは、政府主導の強力な支援策、国際的な人材の集積、充実したベンチャーキャピタル環境により、東南アジアのスタートアップハブとしての地位を確立しています。特に、規制のサンドボックス制度やスタートアップビザなど、革新的な政策が奏功しています。インドは、巨大な国内市場と豊富なIT人材を背景に、ユニコーン企業を多数輩出しており、特にフィンテックとエドテック分野で世界的な競争力を持っています。
日本のスタートアップエコシステムについては、技術力の高さや大企業との連携可能性などの強みがある一方、いくつかの課題も浮き彫りになっています。ベンチャーキャピタル投資額は増加傾向にあるものの、シード・アーリーステージへの投資が相対的に少なく、起業の初期段階での資金調達が困難な状況が続いています。また、失敗に対する社会的寛容度の低さや、規制の硬直性が起業家精神の醸成を妨げている面もあります。
人材面では、日本は優秀な技術者を多く擁しているものの、グローバルな経営人材やマーケティング人材が不足しており、国際展開の障壁となっています。一方で、大学発ベンチャーの増加や、大企業からのスピンアウト起業の活発化など、ポジティブな変化も見られます。
記事は、日本がスタートアップエコシステムを強化するためには、規制改革、リスクマネーの供給拡大、起業家教育の充実、国際的な人材交流の促進などが必要であることを提言しています。