農林水産省が令和6年度に実施した主要国の農業情報調査分析結果について、欧州地域と米国の農業政策・制度の詳細分析を報告したものです。
欧州地域では、2024年に発効したEU容器包装・容器包装廃棄物規則(PPWR)の詳細内容を分析しており、事業者に課される要件として2030年までに容器包装材の軽量化30%以上、再使用可能な容器包装材の比率50%以上の達成義務を解説しています。加盟国に課される要件では、2030年時点でプラスチック容器包装廃棄物の85%以上の回収、リサイクル率55%以上の達成が求められることが示されています。
EU共通農業政策(CAP)については、2023-2027年期のCAP戦略計画が各加盟国で実施されており、ドイツでは生物多様性保全支援として年間12.8億ユーロ、フランスでは有機農業転換支援として年間3.2億ユーロ、オランダでは窒素排出削減対策として年間2.1億ユーロの予算が配分されていることが報告されています。
スイス農業政策では、2022年から新たな直接支払制度が導入され、生産条件支払い、生物多様性支払い、景観品質支払いなど8つのカテゴリーで年間総額28億スイスフラン(約3,360億円)が農業者に支給されています。農薬使用量については2017年比で25%削減を2027年までに目標としており、2023年時点で18%の削減を達成しています。
米国では、2018年農業法の実施状況として、農作物保険プログラムに年間約140億ドル、保全留保プログラム(CRP)に年間約18億ドル、環境品質奨励プログラム(EQIP)に年間約20億ドルの予算が投入されています。次期2024年農業法の検討では、気候変動対策として年間約200億ドルの新規予算配分が議論されており、バイオテクノロジー分野では遺伝子編集技術の規制緩和により商業化承認期間を従来の3年から1年に短縮する方針が示されています。
記事は、各国の農業政策が環境配慮と持続可能性を重視する方向に大きく転換しており、日本の農業政策立案における重要な参考情報を提供していると結論づけています。