日本政策金融公庫が発行した調査月報2025年7月号について、社会の変革に挑む大学発ベンチャーと中小企業における価格転嫁の進展を中心に分析・報告したものです。
大学発ベンチャーに関する特集では、大学の研究成果や技術シーズを基に起業したベンチャー企業が、社会課題の解決や産業構造の変革にどのように貢献しているかを詳細に分析しています。近年、大学発ベンチャーは急速に増加しており、特にディープテック分野(AI、バイオテクノロジー、新素材、環境技術など)において、革新的な技術やビジネスモデルを創出しています。これらの企業は、従来の産業では解決困難だった課題に対して、学術的知見を活かした新たなアプローチを提供し、社会変革の担い手として注目されています。
価格転嫁に関する調査では、中小企業景況調査の付帯調査結果を基に、原材料費や人件費の上昇に対する中小企業の価格転嫁の実態を明らかにしています。調査結果によると、コスト上昇圧力が続く中で、中小企業の価格転嫁は徐々に進展しているものの、業種や取引先との関係性により転嫁の進捗には大きな差があることが示されています。特に、BtoB取引における価格交渉力の課題や、最終消費者への価格転嫁の困難さが浮き彫りになっており、中小企業の収益確保に向けた継続的な取組の必要性が指摘されています。
また、本号では大学発ベンチャーの成長を支援するエコシステムの整備状況や、価格転嫁を促進するための政策的支援の重要性についても言及されており、産学連携の強化や適正な取引環境の整備が、日本経済の持続的成長に不可欠であることが強調されています。
記事は、イノベーション創出と中小企業の経営安定化という二つの重要なテーマを通じて、日本経済の構造的課題と成長機会を包括的に分析した貴重な資料となっています。