この記事は、PwCによる気候変動レポートシリーズの第9弾として、森林減少・森林火災対策の現状と企業が取るべきアクションについて分析したものです。
主要なポイント
1. 森林由来CO2排出の深刻さ
- 全球CO2排出の10-12%が森林減少・劣化に起因
- 年間排出量:約5.5GtCO2(日本の総排出量の5倍)
- 化石燃料以外の最大排出源として看過できない規模
- 2010-2020年で東京都面積の65倍の森林が消失
2. 森林減少の主要因と地域特性
- 農地転換:全体の80%(大豆・パーム油・牧畜が主因)
- 違法伐採:東南アジアで年間530億ドル規模
- インフラ開発:道路・ダム建設による分断化
- 森林火災:気候変動により頻度・規模が30%増加
3. 2030年森林減少ゼロ宣言の進捗
- 141カ国が署名も、達成軌道に乗っているのは23カ国のみ
- ブラジル:アマゾン減少率は改善も目標には程遠い
- インドネシア:パーム油需要増で減少ペース加速
- 必要投資額:年間2,000億ドル、実際は300億ドルに留まる
4. 企業向けの具体的アクション
サプライチェーン管理
- 森林リスク商品(大豆、パーム油、木材、牛肉)のトレーサビリティ確立
- 衛星データによる供給元のリアルタイム監視
- 認証制度(FSC、RSPO)の活用と限界の認識
森林金融メカニズム
- REDD+:検証可能な削減量で年間50億ドル市場
- 森林カーボンクレジット:品質のばらつきに注意
- Nature-based Solutions投資:生物多様性との統合価値
5. 流域単位でのリスク評価の重要性
- 森林は流域全体の水資源・気候調整機能を担う
- 企業の水リスク・気候リスクと直結
- 統合的な自然資本評価の必要性
- TNFD開示要求への準備
記事は、森林保全を「コスト」ではなく「投資」として捉え、長期的な事業継続性の観点から戦略的に取り組むべきだと結論づけています。