通商白書2025「国際経済秩序の転換期に増幅する不確実性」について、現在の世界経済情勢と日本の通商戦略を包括的に分析・提言したものです。
主要なポイント
1. 脆弱な世界経済と関税ショックの影響
- 2024年の世界経済は米国経済に牽引される一方、中国経済の景気低迷が顕著化
- 中国の過少消費構造（消費のGDP比率が主要国と比較して極めて低い）が構造的問題として浮上
- 関税ショックによる経済見通しの悪化が世界経済の下振れリスクを増大
- 保護主義的な通商政策が国際貿易の不確実性を高め、企業の投資判断を慎重化
2. 増幅する不確実性の構造的要因
- 地政学リスク指数が主要国・地域で歴史的高水準に到達（コラムで詳細分析）
- 中国の過剰生産能力問題が世界市場に波及、特定産業での過剰依存リスクが顕在化
- パワーバランスの変化により、グローバルサウスの経済的・政治的重要性が急速に上昇
- デジタル化・グリーン移行への各国の対応が多様化し、新たな経済摩擦の火種に
3. 中国の産業発展が揺るがす貿易投資構造
- 中国の産業基盤が規模の経済を背景に急速に高度化、先端技術分野でも競争力を獲得
- 政府主導の産業発展メカニズムが市場歪曲を引き起こし、公正競争を阻害
- 電気自動車、太陽光パネル、半導体など個別産業で中国の市場支配力が拡大
- 韓国・ASEAN・インドの対中貿易投資関係が複雑化、経済安全保障の観点から再構築が必要
4. 日本の対外貿易投資構造の変容
- 国際収支構造が財貿易中心からサービス貿易・投資収益中心へとシフト
- デジタル化によりモノとサービスの越境取引が融合、新たなビジネスモデルが台頭
- 製造業の海外展開戦略が現地化から地域統合へと進化、コンテンツ産業も海外展開を加速
- グローバルサウス諸国との共創型ビジネスモデルの構築が急務
5. 日本の通商戦略の方向性と具体的施策
- 保護主義の台頭に対し、ルールベースの国際経済秩序の維持・強化を主導
- グローバルサウス・同志国との戦略的パートナーシップを通じた共創と輸出促進
- サプライチェーン強靱化に向けた重要鉱物確保、友好国との連携強化
- 2024年度は各国との経済連携協定交渉、国際フォーラムでの議論主導、企業支援ツールの拡充を実施
記事は、不確実性が構造的に増大する国際経済環境において、日本が包摂的かつ強靱な通商戦略を推進することで、経済安全保障の確保と持続的成長の両立を目指すべきと結論づけています。